2015年8月25日火曜日

2015年8月24日 ポケットゼミが始まりました。

 今年もポケットゼミ(研究室配属前の学生が、研究室に行き、その研究テーマに沿ったミニ研究を行うという制度。)が始まりました。今回のポケットゼミは生産科学科2年の飛鳥井麻結さんがポケットゼミに参加し、約1週間研究することになりました。

 飛鳥井さんが考えた研究テーマは「兼六イモ摂取前後における、イヌの腸内細菌叢の組成の変化」です。研究サンプルには飛鳥井さんの愛犬アポロ(柴犬)の兼六イモ摂取前後の糞を使用しました。兼六イモは1935年(昭和10年)~1940年(昭和15年)にかけて石川県でつくられたサツマイモの品種で、今回実験に使うものについては、生産科学科の坂本知昭先生に頂きました。
 今日の実験内容は、兼六イモを10% (w/v) 含むオリジナルのGAM寒天培地にイヌの糞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に希釈したものを塗布することでした。

兼六芋含有GAM培地。兼六イモの粒と皮が残っています。



 絶対嫌気性のものが多い腸内細菌を出来るだけ生きた状態で扱う目的で、これら操作を全て嫌気チャンバー内で行いました。

右手に持ったピペットマンでイヌの糞をPBSに一生懸命懸濁する飛鳥井さん



 飛鳥井さんにとって嫌気チャンバーに手を入れて実験をすることも、ピペットマンを用いることも初めての体験でした。さらに約1時間も嫌気チャンバー内で操作をしていました。飛鳥井さんは初めての実験操作を嫌気チャンバー内で長時間行っていたため、実験終了後はとても疲れた様子でした。(何度も書きますが、嫌気チャンバーの中は37℃、湿度60%なので暑いです。その暑い中、操作をする際に装着するグローブのゴムによって締め付けられた腕を動かさなければなりません)
 
 飛鳥井さんのポケゼミでの目標は「微生物実験の実験手法を学ぶことと実験ノートを分かりやすく書けるようにすること」です。あと1週間頑張ってください!

2015年8月21日金曜日

2015年9月10日(木)第4回 腸内細菌共生機構学特別セミナー「腸内におけるホストと腸内細菌の相互作用」を行います。

 久しぶりに栗原が書いております。
 9月10日(木)に第4回 腸内細菌共生機構学特別セミナー「腸内におけるホストと腸内細菌の相互作用」を行います。

セミナーポスター(クリックすると拡大されます。)

 今回のセミナーでは腸内細菌とホストの関連を、腸内細菌側から研究されている近畿大学の芦田久先生と、ホスト側から研究されている千葉大学の川島博人先生をお招きます。
 芦田先生のご発表の演題は「腸内におけるビフィズス菌の酵素群」、川島先生のご発表の演題は「大腸上皮細胞特異的オートファジー欠損マウスにおける腸内フローラの変化と大腸炎増悪化」です。

 今回は、石川県立大学からも応用微生物学研究室の加藤先生、腸内細菌共生機構学講座からは栗原と片山が発表を行います。

日時:2015年9月10日(木) 15:00~18:30
場所:生物資源工学研究所212号室(講義室)

 専門的な内容も含まれるセミナーですが、最先端の研究に触れるよい機会となりますので、学部生・大学院生の皆さんの来聴を歓迎します。多数の皆様のお越しをお待ちしております。

 


2015年8月18日火曜日

2015年8月10日 生物資源工学研究所シンポジウム「モダンバイオテクノロジーのフロンティア」で栗原准教授が「細菌が細胞外へ放出するポリアミンの生理的意義とその利用」という演題で口頭発表を行いました。

 810日に石川県立大学附属 生物資源工学研究所のシンポジウム「モダンバイオテクノロジーのフロンティア」が開催されました。このシンポジウムは生物資源工学研究所で行われている研究を沢山の人に知ってもらうために行われたもので、今回は研究所に所属する6人の先生方が自身の研究成果を発表しました。私は研究室メンバーと一緒にこのシンポジウムに参加しました。

 シンポジウムでは栗原先生が「細菌が細胞外へ放出するポリアミンの生理的意義とその利用」という演題で口頭発表を行いました。

生物資源工学研究長の山本憲二先生(右)から紹介を受ける栗原先生(左)

腸内細菌のポリアミン輸送・代謝系の同定が重要であることを力説する栗原先生

ポリアミンの代謝経路を示している時、栗原先生は目の前にいた学生に「ここまで大丈夫?」と声掛けをしながら発表していました。
私が栗原先生の発表で一番驚いたことは、google「嫌気チャンバー」と画像検索をする1ページ目に私と嫌気チャンバーとの2ショット写真が2枚も出てくるということでした。

スクリーンに映っている写真が画像検索で出てくる写真のうちの一枚です。
ちなみに画像検索で引っかかる
2枚の写真は微妙に髪型が違います。


シンポジウム終了後、栗原先生は「同じ組織にいる先生方の研究内容を体系的に聞く機会がなかなか無かったので、今回のシンポジウムはとても面白かった」という感想を述べていました。

私も他の研究室がどのような研究をしているか詳しくは知りませんでした。今回のシンポジウムでは、自分の研究の分野以外の人でも内容を理解できるように先生方は研究のイントロダクションの説明に時間をかける等などして分かりやすく発表してくださいました。そのおかげで私は全ての先生方の研究内容をしっかり学ぶことができました。


 このようなシンポジウムを来年度にも行う予定だそうです。来年度のシンポジウムも参加したいと思います。



2015年8月11日火曜日

修士1回生の谷内君が公益財団法人尚志社の平成27年度奨学生に選ばれました。

 修士1回生の谷内君が公益財団法人尚志社の平成27年度奨学生に選ばれました。この奨学金制度は、すべての学科の大学・大学院在中の学生に対し、返還不要の奨学金を与えるというもので、これまでに石川県立大学の前学長の松野先生をはじめとして、日本の科学界に大きな貢献をした多くのOBを輩出しています。

 谷内君、おめでとうございます。


合格通知と谷内君

 この奨学生に選ばれるためにはいくつかの選考を突破しないといけません。まず石川県立大学大学院に入学した大学院1年生のうち、大学院入試の成績と学部生時代の4年間の成績を基準に学内選考の候補者が選ばれます。学内選考は面接形式で行われ、研究内容や将来の進路についてプレゼンテーションを行います。この学内選考に残った1人が尚志社で行われる最終面接選考を受け、合格した学生が尚志社の奨学生になることができます。

 実は、私・奈良は、学内選考までには残ったのですが、そこで谷内君に敗れ、尚志社の面接に進むことが出来ませんでした。私は大学院入試に合格することと、この尚志社の奨学生になることを目的に大学院入試の勉強を必死でやっていたので、とても悔しかったです。学内選考の面接後に、審査員をされた学長の熊谷先生に「奈良さんの研究内容の説明は長々としていてわかりにくかった。もう少しわかりやすく説明した方が良い」など、多くの貴重なアドバイスをいただくことができたので、学内選考の面接だけでも受けることができて本当に良かったと思います。

2015年8月4日火曜日

研究室にある実験機器「嫌気チャンバー」の紹介をします。

 夏になり、このブログのネタもだんだんと尽きてきました。そこで、このブログでも何回か話題にした嫌気チャンバーの紹介をします。
 嫌気チャンバーは作業スペースを無酸素状態に保つことのできる機械です。酸素に触れると死んでしまう腸内細菌の研究を行っている私たち研究室にとってこの嫌気チャンバーはとても重要です(写真1)。

写真1 嫌気チャンバーとわたくし


 さて、この嫌気チャンバーはどのように無酸素状態を作り出しているのでしょうか。無酸素状態を作るには嫌気チャンバー横に設置されている窒素ガスと水素-窒素混合ガスが欠かせません(写真2)。


写真2 左から炭酸ガス、窒素ガス2本、窒素ガス



 まず窒素ガスが嫌気チャンバー内に入ることでチャンバー内の酸素濃度を約20%から約5%まで下げます。その後混合ガスが入ることで、水素と酸素が、機械に組み込まれている触媒の助けを借りて化学反応を起こし、水になることで、酸素を完全に除去することができます。一番左にある緑のボンベに入っているガスは炭酸ガスです。炭酸ガスは一部の腸内細菌について、炭酸ガスを含む環境で培養することが推奨されているので、チャンバー内に入れる必要がある場合に使います。
 嫌気チャンバーには作業が容易になるような様々な工夫が施されています。私・奈良の一番のお気に入りの機能はチャンバー内の上方にある棚がスライドすることです。嫌気チャンバー内で操作をする際には写真3のように白いアームカバーを装着する必要があります(写真3)。

写真3  気密を守るために締め付けがかなりきついアームカバーのゴム

 外気の侵入を防ぐためにアームカバーの先端についたゴムで腕を強く締め付けるため(嫌気チャンバーを長時間使用した後、締め付けられた痕が30分経っても腕に残るぐらいきつく締め付けられます)、手の動きは制限されます。そのため棚の上の奥に置いてある物を取る時になかなか手が届かず、苦労します。しかし、棚がスライドするので簡単に棚の上の奥にあるものを取ることができます(写真4、5)。

写真4 嫌気チャンバー内の様子。上に見えるのが可動式の棚

写真5 手はあまり深く突っ込めませんが、棚が手前に引き出せるので棚の上のものを取ることが出来ます。


 嫌気チャンバーなしでも小さい嫌気ボックス(アネロパックと呼ばれます)を用いて一部の腸内細菌を培養することは可能です。しかし、菌を植える操作をしている最中に空気に触れるだけで死んでしまう腸内細菌もいます。このため、嫌気チャンバーはとても重要です。
 私がこれまでに培養してきた50種類余りの腸内細菌のうち、2種類がよく生えませんでした。嫌気チャンバーの中で菌を生やす操作をしたので、おそらく酸素は原因ではないと思っています。実験をしているとよく失敗しますが、何が失敗の原因かわからないことがほとんどです。嫌気チャンバーはその原因の一つを(多分)減らしてくれるということで、とても重宝しています。